2018年4月25日にキングレコードからフルアルバム『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』でメジャーデビューを果たし、12月に新たに加入したベーシスト、ショーン・ホラーショーを迎えて新体制初となった首振りDolls。

 Dr/Voナオ、G/Voジョニー・ダイアモンド、Bショーン・ホラーショーが放つ音楽は、昭和歌謡やガレージロックをルーツとしたナオの個性に、初期パンクやハードロックをルーツとするジョニーの作曲センスとファンキーかつグルーヴィな楽曲をルーツとするショーンの要素が融合した、独自でジャンルレスな【首振りDollsという新たなジャンル】と言えるだろう。

 5月22日に待望のニューアルバム『アリス』をリリースすることを発表した首振りDolls マンスリーインタビュー第2弾は、【首振りDollsというバンドはいったいどんなバンドなのか?】に迫ってみることにした。



――前回の第1弾では、ショーンくんが入って……っていうところでしたね?

ナオ:はい。

――今回はさらに、首振りDollsとはなんぞや? という首振りDollsというバンドの音について詳しく語ってもらおうと思います。首振りDollsはジョニーとナオから始まったわけだけど、当初、どういう音楽性にしようという話から始まったの?

ナオ:地元のホームでもある小倉FUSEの前身ライブハウス〝バグー〟の元店長の後藤さん(故)がまずジョニーと俺を引き合わせてくれたんです。

ジョニー:後藤さんのイベントで、前の俺がやりよったバンドとナオがやりよったバンドが対バンして、そこで知り合ったんやったかな?

ナオ:そうそうそう。

ジョニー:それが『真夜中の徘徊者』っていうイベントやったんよね。

――なるほど、だからメジャーデビューアルバムに『真夜中の徘徊者』っていうタイトルを付けたんだね。

ナオ:そう。首振りDollsはそこから始まったから、どうしてもそのタイトルにしたくて。音楽性に関しては俺とジョニーは似ているとこもあるけど、少し違っていたりもするんです。ジョニーは出逢ったときは、もっとロックンロールっていうかパンクだったんだよね。当時の俺はもっとわかりやすいロックンロールバンドをやっていたんです。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな。「ザ」が”THEE”でEを2個つけてるっていう…思いっきりミッシェル好きみたいなロックンロールバンド(笑)。音もそのままみたいな感じやったんですよ、好きすぎて(笑)。

ジョニー:俺も昔やってたバンドの「ザ」も”THEE”やったわ(笑)!

ナオ:“THEE”やちがちよな(笑)。

ジョニー:やりがちやりがち(笑)! 

――2人が首振りDollsでやりたかった音楽はどんな感じだったの?

ジョニー:俺は首振りDollsで日本語ロックをやりたかった。スライダースとか、村八分とか…それがそのとき俺のブームやったけ、それっぽいのを作りたかった。

ナオ:言ってたね。新しくバンドしたいからドラム叩いてくれって言われたんですよ。それが首振りDollsの始まりでしたね。最初は全然ロックンロールとは遠い感じの、フォークに近い曲をやってたんですよ。「遠回り」って曲とか、今もよくライヴでやってる「ロックンロール」とか「タイムマシーン」が紛れてましたね。

――今も当時の古い曲をライヴでやっていたりするけど、違和感ないよね。

ナオ:うん、全然ないですね。

――その頃ショーンはまだ別の人生を歩んでいたんだね。

ショーン:そうですね、まだ首振りDollsに入ることになるとは思わず生きてましたね(笑)。

ナオ:まだそのときは首振りDollsっていう名前が付いていなかったかも。ジョニーと2人で小倉のBarで飲みながらバンド名を決めたんですけど、あの頃はみんなでジョニーの家に集まって、衣装は古着屋で買ってきて。

ジョニー:最初は全部俺のお下がりやったよね(笑)。

ナオ:そうそう。全部ジョニーの服だった(笑)。

――なんだかキュンとする話だね(笑)。最初に作ったインディーズで作ったアルバム『首振人形症候群』はすごく完成度高いよね。

ナオ:結構すぐ売れちゃったんですよ。

ショーン:あ、それ、貰いました!

ジョニー:ネットで売ったら今、高値で売れるみたいよ!

ナオ:オークションで5万とかついてたよ!

ジョニー:ホントっ!? お金に困ったときは是非(笑)!

ショーン:あははは。絶対売らない(笑)!

ナオ:てか、俺持ってない……(苦笑)。

――本人なのに(笑)。すごくガレージ色の強いアルバムだよね『首振人形症候群』は。5月22日にリリース予定のメジャー2ndアルバム『アリス』はちょっとそこに近い匂いもする原点回帰を感じたりもするし、結成当初から首振りDollsの良さが凝縮された1枚が既に出来上がってた感はあるよね。

ショーン:たしかに。それは思いますね。側から見ていてすごくいいなぁっていう印象でしたからね。音デッカ! みたいな(笑)。

ナオ:音でかいね(笑)。

ジョニー:音ちょっとデカすぎたな、今思えば。

ナオ:まぁね(笑)。でも、本当にめちゃめちゃバカ全開でさ(笑)。どんな感じの音にしたいかって聞かれて、何か参考になるCD持ってきてって言われて、ジョニーが持ってきたのがThe Stoogesの『Raw Power』で。

ジョニー:イギー・ポップが自らマスタリングしたやつ。リマスターみたいなやつで、バカみたいに音がデカイの。その『Raw Power」よりデカイってアウトやけん(笑)。

ナオ:この音で録りたいってジョニーが言ったんだけど、もう誰が聴いたって音がいいっていうか、それ以前にめちゃくちゃ…

ジョニー:うるせぇ。

ナオ:そうそう(笑)。ただうるさい(笑)。

ジョニー:びっくりするやつね(笑)。

ナオ:でもそれがカッコいいんですよ! “それがやりたい!”って言って作ったのが、初めて首振りDollsとして作ったアルバム『首振人形症候群』なんです。

――初期衝動や荒っぽさも、ここに原点があるんだなと。

ナオ:あれ一発録りやったもんね。

ジョニー:ほぼね。

ナオ:うん。ほぼ一発録り。

――ショーン的にはさ、あんまりガレージってそんなにルーツに無いわけでしょ?

ショーン:そうですね。でも、そこにルーツはなくとも、首振りDollsの音は惹かれるものがあるんですよ。音源ももちろんすごくカッコイイんですけど、一番はやっぱりライヴのインパクトからでしたね。音源以上にさらにいいんです。

――ショーンが首振りDollsのライヴを観て惹かれた部分は、どういうところだったの?

ショーン:メイクと、パフォーマンスと…とにかくアグレッシヴな魅せ方でしたね。そこは今もずっと変わってないなって思います。個人的にライヴパフォーマンスがカッコイイバンドが好きなので、首振りDollsもそこに凄く惹かれましたね。

――でも、ショーンはグルーヴィな音楽ジャンルがルーツだから、ある意味首振りDollsが個性としていた音楽性にはあまり馴染みがなかったわけでしょ?

ショーン:たしかにそうなんですけどね、首振りDollsの音楽には本当にすごく惹かれる個性を感じるんです。好きなジャンルじゃなくても絶対にいいなって思えると思うというか。いろんな要素が入っているんですよ。

――たしかに。いろいろ入っているから、誰でも好きになれる要因がそこにあるというか。

ショーン:そうですそうです。

ジョニー:たしかに、元々初期メンバーの首振りDollsの3人とも全然バラバラやし、そういうのは全く気にしたことが無いというか。

ナオ:うん。そういえばジャンル気にしたことはないよね。

ジョニー:多分ショーンが実はHIPHOPしか聴かないんです! みたいな感じでも全然受け入れられる感じがするというか。

ナオ:どうにかなるよね。

ジョニー:うん。取り入れよう! 取り入れよう! ってなるし、レゲエしかしません! って言っても、全然あり。

ナオ:うん(笑)。全然取り入れるね。なぜならば、何をやっても首振りDollsになるから。

ショーン:それは感じますね。本当に、ジョニーがギターを弾いて、ナオくんが歌えば不思議と首振りDollsになるんです。本当に。

――たしかにそうだね。

首振りDollsの音楽ってジャンル別に、“HR“でもないし、“NW“でもないし“HM“でもないし、そういうところではないところで出来上がってきてる気がするよね。昭和歌謡っぽい楽曲もあるし。幅が広い。そういえば、今回のアルバム『アリス』には、昭和歌謡方面要素の楽曲は無いのかな?

ナオ:あぁ、たしかに歌謡曲っぽいのは今回は入れてないかな?

ジョニー:いや、あるっちゃあるでしょ。

ナオ:あるっちゃあるか(笑)。そこまで毒々しいのはないけど、ポップス系のメロという意味ではあるのかもね。俺の中に根ずく昭和歌謡曲のエッセンスは、どうやら体に染み付いているみたいですね(笑)。

――そうだね。ショーン的には昭和歌謡っぽい首振りDollsの楽曲に関してはどう?

ショーン:すごく好きです、当時から。好印象というか、頭に残るなぁって思ってましたからね。

ナオ:基本ロックンロールなのに、そういう昭和歌謡テイストが入ると楽曲の幅が一気に広がるというか、ジャンルレスになる。結成当初から“首振りDollsとは何か?”みたいなとこをメンバー間でも話し合ったりもしてみたんだけど、いまいちよく分からないですね。例えば今、何処と対バンしたら面白いんだろう? って考えると想像が付かないんですよ。対バンしたいバンドさんはいっぱいいるけど、何処とも何かこう…………

――混ざり合わない?

ナオ:うぅ〜ん。混ざり合わないというか、首振りDollsみたいな音のバンドって他にないなぁって、改めて思うというか。例えばApple Musicとかで聴いてたら、これが好きなら、これがオススメ! みたいなのが出てくるじゃないですか。そんな感じの、同じ属性の、似た趣味の人達が聴くようなバンドっていうのがあると思うんですけど、首振りDollsの下のオススメ欄って誰が出て来てるんだろうね? って思っちゃうんですよね(笑)。

ジョニー:見てみよう! あ、出てきた! 地獄ヘルズ(笑)!

ナオ:自分やん!

ジョニー:(オススメを読み上げる)地獄ヘルズ(※ナオとジョニーが参加しているバンド)、Leetspeak monsters、cali≠gari、清春、D’ERLANGER、ZIGGY、MUCC、lynch.、MERRY…………パイセンばっかりや! 

ナオ:恐れ多い!  

ジョニー:あんま周りを気にせんっていうか。好き勝手にやってる感じですからね、首振りDolls。

ナオ:同世代の人達が聴いてる音楽と同じ音楽は聴いてないと思うんですよね、俺たち。だからこそ年上の先輩ミュージシャンの方々もいいねって言ってくれる音楽になったんじゃないかなって思いますね(笑)。嬉しいなって思います。40歳、50歳以上の方達にもいいねって言ってもらえてることがすごく光栄で。

ショーン:本当の音楽好きが好きって言ってくれるのはすごいことですよね。本当に嬉しいなって思いますね。それに、やっぱり首振りDollsの魅力はドラムボーカルっていうところでもあると思いますね。本当に、僕も最初に衝撃を受けたのはドラムボーカルというパフォーマンスでしたからね。ザ・インパクト。この先も、そこは押し出していけたらなって思っていますね。他にないことをもっと求めたいというか。インパクトって大事だというのが自分の中ではかなり大きいですからね。

ナオ:新体制になって、“もう私が好きだった首振りDollsはいない!”みたいなことを言われるかな? って思ってみるんだけど、きっと新しいアルバム『アリス』を聴いてくれたら、そんな風には絶対感じないと思う。ショーンくんが新しく入って、確実にバンドのサウンドが新しくなってるはずなんだけど、きっとみんなびっくりするくらい違和感無く受け入れてくれると思う。

ジョニー:そうそうそう。結局首振りDollsの音やってなるんやなって。あ、こういうもんか! って分かる気がする。

ナオ:首振りDollsのサウンドの肝みたいなところって、ジョニーのギターの音と、俺の歌で、そこさえ揺らがなければ何やっても首振りDollsだったんですよね。でも、そこにショーンくんのベースが入ってきて、すごいトライアングルが出来上がって。ドラクエの武器で言ったら何やろうね? ショーンくんのベースって攻撃力の塊みたいなベースなんですよ。

ジョニー:ドラクエの武器で言ったら、正義のそろばん?

ナオ:正義のそろばん?? ……何かこん棒の先に勇者の剣ついとるみたいな………

ジョニー:ずっと卑怯や!

ナオ:ずっと卑怯!(笑)。ショーンくんのベースはとんでもない。グル―ヴも支えるし、攻撃力的な部分もあるし。聴いてる人の耳にバチバチ当たる部分と支えてる部分のどっちもあるんですよね。

――ショーン的には、今回のアルバムとかでどういうふうに魅せていこうという画があった? このジャンルと首振りのこれを融合させたいって思っていたのか、素直に自分の中から出てくるものを首振りDollsの音として提出したのか。

ショーン:曲によって変えましたね。支える曲はものすごい支えたし、これは行けるな! ってやつはめっちゃ行きました。行きすぎやろ! くらい行きましたね(笑)。

ナオ:自分もいち視聴者的気分を味わいながら今回レコーディングがやれた感覚だったので、テンション上がってる状態のノリで歌を歌ってるんです、全曲。ショーンくんのベースに関しては、“ここでこんなことするんや!?”って思いながら歌ってるんです(笑)。予定調和じゃない、ちょっと困った感じとかもどっかで出てると思うし(笑)。ちゃんとレコーディングしたけど、どっかライヴ感があると思う。

ジョニー:最初の『首振人形症候群』と『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』のちょうどイイトコが今回あるんじゃないかなと。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の2と1が同時に楽しめる感じかな(笑)、過去も未来も。

ナオ:そう。今の首振りDolls、相当面白いと思うんですよね。音的に。ショーンくんはビックリ箱みたいな人ですからね(笑)。

ショーン:たぶん、CDとライヴでは結構やってること違うと思います!

ナオ:正直音源のとおりにライヴで演奏しようなんて俺、悪いけど微塵も思ってないっていうか……

ジョニー:っていうか、一度もできたことないよ。

――あははは。逆にね。

ジョニー:うん(笑)。逆に無いと思う。

ナオ:やろうと思ってもできないし、音源と同じようには。だってそこにお客さんがいるんだもん。

――まぁね。テンション感の問題もあるしね。

ナオ:そうそう。それぞれの良さがあるはずだから。ライヴはライヴ、音源は音源のね。

ジョニー:俺、首振りDollsのライヴ観てみたいなぁ。

ナオ:それは叶わない夢だねぇ(笑)。

――そういう意味では、一番最後まで首振りDollsのライヴを見ていたショーンとしては、今後首振りDollsはどういうライヴをしていったらいいなと思う?

ジョニー:いきなりぶっこんできたな(笑)。

ショーン:今後……? 

――そう。デビュー戦が結構広い箱で、SEX MACHINEGUNSとの2マンツアーもやって、いろんなライヴを経験していってる最中だと思うけど。

ショーン:やっぱり、飽きさせないこと、インパクトは常にありたいですね。今、3人が3人ともパフォーマンスをすごい重視していると思うから、ライヴも絶対面白いと思うんです。自分たちもお互いに楽しんじゃう感もあるし。

ナオ:最近めちゃめちゃ楽しいんですよね、ライヴ。

ショーン:うん。いろんな人たちに観て欲しいですね。本当に。

ナオ:首振りDollsとはなんぞや? って言われたらもう、“ロックンロールです!”って迷わず叫びたいです! この頃、若い世代が、最近の音楽を聴かずに昭和の音楽を聴いてる層が増えてるって聞いたり、最近の音楽わからないって言ってる40・50・60の世代の人達が居るって話をよく聞くんですけど、間違いなくあなたの居場所はここですよ~! って叫びたくなりますね。今、売り出し中のバンドが、あなた達が好きな音出してますよ〜! って(笑)。気付いて欲しいですね、首振りDollsという存在に。

――そうだね。

ナオ:やっぱライヴ見ないとわかんない、首振りDollsは。ライヴが生きる道ですからね。CDももちろんだけど、やっぱライヴだから。ライヴこそ生きる道。一生ライヴだなと思ってるから、ライヴ見て欲しいですね。ライヴさえ見れば、首振りDollsって何? ってのが分かってもらえると思う。ただのロックンロールだって(笑)。この後、5月22日にアルバム『アリス』をリリースしてアルバムツアーに出かけますので、是非、遊びに来て下さい!


取材・文● 武市尚子

撮影●FukcrecHbk!