5月22日に新体制初となったニューアルバム『アリス』をリリースし、5月24日から全国ツアーをスタートさせた首振りDollsが、8月30日に東京・新宿ロフトでツアーファイナルを迎えた。

 その景色は、この先のロックシーンの台風の目となる勢いを感じさせた、記憶に残るライヴとなった。


「We are 首振りDolls!!! We are 首振りDolls!!! We are 首振りDolls!!!」

 ドラムボーカルのナオはライヴの後半、曲中にオーディエンスと声を重ねる「ティーンネイジャーロックンロール」の間奏で、いつしかそう叫ぶようになった。

そして毎度、ステージ中央でドラムを叩きながらそう叫ぶナオの元に、ジョニーとショーンは身を寄せるのだ。

 ナオが何をきっかけに、こうして自らのバンド名を畳み掛けて叫ぶ様になったのか直接確かめてみたことはないが、きっとそれはとても自然なことなのだと思う。ショーン(B)を去年の12月に迎え入れ、首振りDollsをこの世に生み出した相方のジョニーと共に、この3人で同じステージの上で“新生首振りDolls”として音を放つ様になって約半年。ナオの中に“この3人で首振りDollsであること”の意味と手応えが日に日に強くなっているのだろう。力一杯で叫ばれるその言葉はとても力強く、確固たる自信に満ち溢れている。私には、“この3人でロックンロールシーンに戦いを挑むんだ! この3人の音で聴いてくれる人たちを楽しませて幸せにするんだ!”と叫んでいる様に聞こえてならない。

 2019年8月30日。新宿ロフト。

 この日もナオは、ライヴの終盤に置かれていた「ティーンネイジャーロックンロール」で、“We are 首振りDolls!!!”と間髪入れることなく3度重ねて叫んだ。その言葉は、今まで聞いたその叫び声の中で一番高い熱を放っていたと言っても過言ではない程に力強かった。その叫びの力強さは、この日の手応えを確信させるものだったとも言えるだろう。

 5月22日にメジャー2ndアルバム『アリス』をリリースし、5月24日からスタートさせた全国ツアー『PSYCHO SHOCK!!』の最終地点として彼らが選んだ場所・新宿ロフト。北九州のバンドである首振りDollsにとって、憧れて止まない日本のロックシーンを築き上げて来た先人達がステージに立ってきた“ロックの登竜門”である新宿ロフトに挑むということは、純粋な憧れでもあったことだろう。しかし、それは今、漠然とした憧れだけではなく、バンド人生において越えていかなくてはならない一つの節目に変わっていた。

 彼らが新宿ロフトでのワンマンライヴを決めたのはショーンが加入する以前のこと。時期的なところでいうと、メジャー1stアルバム『ミッドナイトランブラー〜真夜中の徘徊者〜』のリリースツアーを終えた頃。今回のツアーの軸となったアルバム『アリス』は、もちろん形にはなっていない。この頃の彼らにとって新宿ロフトは、漠然とした憧れの場だったかもしれない。しかし、首振りDollsに大きな進化を齎したショーンと共に作り上げた『アリス』は、この新宿ロフトのライヴを、“漠然とした憧れの場所”でのライヴではなく“確信を体感すべき場所”へと変えたのだ。

 彼らがこのツアーに『PSYCHO SHOCK!!』という名を授けたのが何よりの証拠。ナオとショーンの共作であったリード曲「黒い太陽」と共にアルバムのダブルリード曲とした、ショーン作曲の「PSYCHO CLUB」をツアーの軸に持って来たのは、新たに始まる首振りDollsの明示であったと言える。

 なんと彼らはこの日、長年オープニングSEとして使用して来たThe Zanies の「The Mad Scientist」ではなく、『PSYCHO SHOCK!!』のファイナルであったこの日のためにショーンが書き下ろしたインダストリアルなSE「PSYCHO SHOCK」から幕を開けたのだ。

 そこから繋げられたオープニングナンバーは「PSYCHO CLUB 」。過去には無かったリズミックな首振りDollsの世界は、アルバムのリリースからわずか3カ月ですっかり首振りDollsのもう一つの個性を築き上げていた。フロアに犇めくオーディエンスの体を気だるく揺らした「PSYCHO CLUB 」から、「ティーネイジ」へと舵を切り、「唐紅」「蜃気楼」といった北九州魂を惜しみなく吐き出したロックンロールナンバーでいなたく攻め込んだ彼らは、一気にその場の温度を上昇させた。

 始まりからわずか4曲で、ナオに“この日の為に生まれてきたみたい!”と言わしめたフロアのノリはたしかにヤバかった。彼らから放たれる爆音を浴びて躍り狂うノリは、フロア前方だけではなく、後方にまで変わらない熱で伝わっていたのだ。

 彼らは、そこから、「wanted Baby」「INU」「地獄に堕ちた野郎ども」といった、いなたいロックンロールナンバーでしばらく攻め立てていった。その並びは実に最強でーーーーー。その様は、ナオとジョニーが追い求めてきた往年のロックンロールへのリスペクトを、最高のサウンドで感じさせてくれた。ミクスチャーをルーツとするショーンが首振りDollsに持ち込んだグルーヴィな低音が、無骨で力強いナオのドラムに自然なスナップを与え、“首振りDollsの絶対的な個性”であるジョニーのギターのいなたさに、これまでには無かった角度の奥行きを与えた。それにより、“首振りDollsという絶妙なバランスのロックンロール”が確立したことを確信させてくれたのである。

 オーディエンスのクラップと囁く様な声で差し込まれるジョニーのコーラスが、妖しげな曲をさらに個性的な世界観へと導く「ホール」もショーンが首振りDollsに持ち込んだ“今っぽい”新たな表情なのだが、そこから繋げられた、おどろおどろしいイントロのギターフレーズが印象的な初期曲「鏡地獄」への流れも、違和感なく、両極の魅力を引き出していたのだった。

 中盤戦には、ナオの甘く深みのある歌声が活かされた「BROWN SUGAR 」「浮気夜」「シャボン玉」が届けられ、ジョニー作詞作曲の「星屑のメロディ」で歌モノブロックが締めくくられると、フロアからは驚くほどの大きな歓声が彼らを包み込んだ。

 艶っぽさを宿した声で、女の情念が唄われるナオ作詞作曲の過去曲と、哀愁を背負った情けない男の心情が吐き出されたジョニーの描く楽曲達と、その両方には無いダンスなノリで会場を酔わすショーンの感性。それらが絶妙な並びで届けられていった魅せ方も、この日を最高のノリへと導いていた大きな要因であったと感じさせた。

オーディエンスが勢いよく翳したタオルで埋め尽くされたフロアに響いた「黒い太陽」から始まった後半戦は、デビューアルバムのリード曲であった「イージーライダー」へと繋げられ、“もっと欲しい!”と懇願するオーディエンスの声に“まだまだ最高のトドメが残してあるぜ!”と言わんばかりに、ショーンの加入により別物と化した最強の「ニセモノ」を筆頭に、首振りDollsのヘヴィゾーンへと引きずり込んでいったのだった。同期を使わずともインダストリアルな印象を植え付ける猟奇曲「サンドノイズ」、怒りと吐露される心境が、首振りDollsらしいフレーズに乗せられシャッフルする人気曲「カラリカラマワリ」、往年のハードロックを彷彿させるサウンド感に誰もがニヤケ、必ずやこの曲から首振りDollsというバンドに堕ちる最強曲「悪魔と踊れ」の流れは、手放しでロックに溺れたいと身を投げ出せるほどの破壊力だった。もう、何も文句は無い、そんな笑顔がフロアに充満していたのがとても印象的だった。

 「ロックンロール」「タイムマシーン」といったザッツ・ロックンロールナンバーが本編ラスト2曲に置かれていたのは、この先のロックンロールシーンを自分たちが先頭だって引っ張っていくことを約束していたのではないかと感じられたほど、現時点での最高の“首振りDolls”を魅せてくれた。

 アンコールでは、ショーンが作詞作曲の新たな曲も届けられ、進化し続ける首振りDollsをオーディエンスに約束したのだった。

 この日を締めくくった「ティーンネイジャーロックンロール」の中でナオが叫んだ“We are 首振りDolls!!!”は、いつも以上に誇らしくフロアに響き渡った。この叫びの力強さは、集まったオーディエンスを間違いなく幸せな時間へと導けたという手応えの大きさだったに違いない。

 彼らはやっと今、スタート地点に立てたのかもしれない。

 首振りDollsはこの先、10月29日にはMUCC、ミオヤマザキと新木場STUDIO COAST、11月5日には土屋アンナとCLUB251、12日20日にはナイトメアの柩のソロプロジェクトであるgremlinsと青山RizMで対バンが決定しており、さらに12月16日には、発売後数日で完売した幻のインディーズ1st アルバム『首振人形症候群』が新曲を交えてリリースされ、同日にはレコ発ワンマンライヴが下北沢GARDENにて開催される。

撮影◎青木カズロー

取材・文◎武市尚子

1. PSYCHO CLUB 
2. ティーネイジ 
3. 唐紅 
4. 蜃気楼 
5. wanted Baby 
6. INU 
7. 地獄に堕ちた野郎ども 
8. ホール 
9. 鏡地獄 
10. lazy 
11. BROWN SUGAR 
12. 浮気夜 
13. 産声 
14. シャボン玉 
15. 星屑のメロディ 
16. 黒い太陽 
17. イージーライダー 
18. ニセモノ 
19. サンドノイズ 
20. カラリカラマワリ 
21. 悪魔と踊れ 
22. ロックンロール 
23. タイムマシン 
<ENCORE> 
1. 切花 
2. 新曲 
3. ティーンネイジャーロックンロール

■New Release

2019年5月22日リリース 絶賛発売中!

首振りDolls『アリス』

KICS-3800/¥2,700+税/KINGRECORDS

詳細:http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=45515

<収録曲>

01.唐紅 

02.カラリカラマワリ 

03.PSYCHO CLUB 

04.黒い太陽 

05.産声 

06.ティーネイジ~new dolls ver~ 

07.lazy 

08.ホール 

09.BROWN SUGAR 

10.地獄に堕ちた野郎ども 

11.INU 

12.シャボン玉 

13.星くずのメロディ 

14.ティーンネイジャーアンドロックンロール 


●ジャケットのアートワークは、『デスコ』『BAMBi』『SOIL』という数々の人気作品を手掛け、最新作として手塚治虫の名作『どろろ』を大胆にアレンジした『サーチアンドデストロイ』が話題となっている人気漫画家のカネコアツシ氏! 

最新作『サーチアンドデストロイ』待望の第2巻(発売元はマイクロマガジン社)が10月5日に発売! 巨匠・手塚治虫の名作『どろろ』を原作に、鬼才・カネコアツシが大胆に再構築した、怒りと革命の物語!   

●カネコアツシ

マンガ家。著作『BAMBi』『SOIL』『Wet Moon』『デスコ』など。

最新作は手塚治虫『どろろ』のトリビュート作品『サーチアンドデストロイ』(マイクロマガジン社『テヅコミ』連載)。

イラストレーターとしてもCDジャケットなど数多くの作品を手掛ける。

オムニバス映画「乱歩地獄」の一編「蟲」(原作/江戸川乱歩 主演/浅野忠信)では脚本、監督も務めた。著作はフランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語等に翻訳され、出版されている。

『Wet Moon』フランスBD批評家協会賞2014アジア部門グランプリ受賞。『SOIL』サンマロ文学祭GRAND PRIX DE L’IMAGINAIREマンガ部門グランプリ受賞。アングレーム国際漫画祭2012、2013、2015ノミネート。『デスコ』文化庁メディア芸術祭2015審査委員推薦作品選出。

●【首振りDollsプロフィール】
Dr/Voナオ、G/Voジョニー・ダイアモンド、Bショーン・ホラーショー。2012年1月結成。爆発的成長を続ける今最も危険な3人組。ドラムボーカルをフロントとしたスリーピースバンドであり、昭和歌謡やガレージロックをルーツとしたナオの個性に、初期パンクやハードロックをルーツとするジョニーの作曲センスとファンキーかつグルーヴィな楽曲をルーツとするショーンの要素が融合し、独自でジャンルレスなサウンドを築き上げている。何処にもない肌触りを武器とする首振りDollsのライブは、楽曲の良さはもちろんのこと、ジョニーとショーンのテクニカルなプレイとアグレッシブなパフォーマンスも見どころとされ、ホラーテイストなメイクとド派手でシアトリカルな表現に乗る捻じ曲がった感情を吐き出すようなナオのドラムと歌唱も、ストーリー性の高い舞台を見ているようだと好評を博している。叩き上げのバンドらしい、太くド派手な、懐かしくも新しいロックンロールは必聴。2018年4月25日にキングレコードより『真夜中の徘徊者〜ミッドナイトランブラー』でメジャーデビューし、同年12月にショーン・ホラーショーを迎え新体制となる。2019年5月22日に新体制初となるニューアルバム『アリス』をリリース。

Official Site https://kubihuri.com/
Official Facebook https://ja-jp.facebook.com/Kubihuridolls/
Official Twitter https://twitter.com/kubihuridolls

首振りDolls公式キャラクター〝ギロちん〟誕生!

オフィシャルツイッターはこちら https://twitter.com/girochin_

●【ライヴ情報】

2019年
10月29日新木場STUDIO COAST(MUCC/ミオヤマザキ/首振りDolls)

11月5日CLUB251(土屋アンナ/首振りDolls)

11月12日青山RizM(gremlins/首振りDolls)

   20日青山RizM(gremlins/首振りDolls)

12月16日下北沢GARDEN(One man)